ジュエリーから読み解く「ダウントン・アビー」 ~実はサスペンスだった?!~ 謎の死とモーニングジュエリー

2014/08/27
ジュエリーから読み解く「ダウントン・アビー」 ~実はサスペンスだった?!~ 謎の死とモーニングジュエリー

「ダウントン・アビー」 シーズン1のブルーレイ&DVDが発売され、ジュエリーなどの細部までじっくり観ることが出来るようになりました!
皆さま、ご購入はお済みですか?
パッケージを見て、目に飛び込んだ「英国サスペンス・ドラマ」。
ダウントン・アビーってサスペンスだったのね~と、思われた方もいらっしゃるかもしれません。「サスペンス」という括りでいいのかどうか、は置いておいてもタイタニック沈没による婚約者の死亡の知らせから始まり、客人の謎の死…と確かに人が亡くなることの多いダウントン・アビー。
当時は、近親者が亡くなると2・3か月から数年という単位で喪に服すモーニング(mourning)と呼ばれる期間がありました。イギリスでも近年では、急速にモーニングの習慣は消えてしまいましたが、そんな時身に付けたのがモーニングジュエリーと呼ばれる黒い素材で出来たジュエリーです。


1409102048-127975_2

喪に服しているコーラ、バイオレット、メアリーまでが黒いジュエリーを身に着けて

黒い素材とは、木の化石であるジェット(黒玉)、オニキス、フレンチジェット(ブラックガラス)などの他に鼈甲に金や銀を象嵌したピクウェ、カットスチールやベルリンアイアンなどです。


1409102048-127975_3

モーニングジュエリーといえども華やかなブラックジュエリー

このように、素材やデザインが多岐に渡るのは、ヴィクトリア女王の40年にも及ぶモーニングがあったため。1861年に最愛の夫と母を亡くしたヴィクトリア女王は1901年に亡くなるまでの間、喪服を着続けました。貴族をはじめとする女王の関係者や女王に謁見する人々は、喪の装いをして哀悼の意を示すことが必要とされた上、当時のファッションリーダーである女王に倣って多くの人々がモーニングジュエリーを身に着けたので、高品質であったイギリスのウィットビー地方のジェットは、この時期に取り尽くされてしまったと言われています。
けれども最も繁栄した時代の英国のこと、女王のモーニングとはいえ社交の必要やお洒落を競うこともあったでしょう。変わった素材や大きさ、細工にこだわったモーニングジュエリーがアンティークには数多く見られます。


1409102048-127975_4

代々受け継がれていくジュエリー

ドラマが展開されているのは1910年代ですが、ヴィクトリアン、いえそれより前の時代から受け継いでいる、という設定でジュエリーがセレクトされているのを感じます。そして、受け継がれてきたジュエリーとともに経過したであろう時間の長さが、このドラマに奥行きを与え、クローリー家がどのくらい格式のある一族であるかを想像させるのです。お屋敷であるダウントン・アビーに象徴されるように、貴族と呼ばれる人々は、代々譲り受けているものを守り、出来れば自分の代でそこに少しプラスして次の代に渡していくことが役目であると考えています。一口で言えば「伝統と格式を重んじる」といったことなのですが、長く受け継いでいくことがどんなに難しいことかは、ドラマに譲ることといたしましょう。
「英国サスペンス」。ドラマチックな展開と共に喪のシーンでは、当時の習慣とモーニングジュエリーにもご注目頂くと、一層深く「ダウントン・アビー」を味わって頂けるのではないでしょうか。


1409102048-127975_5

ヴィクトリア時代のモーニングジュエリー

Photo&Text:
ジュエリースタイリスト、Antiques Violetta取締役。
青山 櫻

写真提供
「ダウントン・アビー」ブルーレイ&DVDリリース中
NBCユニバーサル・エンターテイメント
© 2010 Carnival Film & Television Limited.All Rights Reserved.
downtonabbey-tv.jp


RSVP’s Recommend

RSVP書籍の購入はこちら

To top ↑