スコッチウイスキーの魅力 ~ブレンドウイスキーとシングルモルト~

2014/07/25
スコッチウイスキーの魅力 ~ブレンドウイスキーとシングルモルト~

英国のお酒としてどんなものを思い浮かべるでしょう。パブでよく飲まれるビール、ロンドンドライジンに代表されるジン、ケント州で作られるワインを思いつく方も少ないでしょう。しかし、もっとも多くの方はスコッチウイスキーを思い浮かべるのではないでしょうか。

スコッチウイスキーは、ブリテン島北部に位置するスコットランドで造られています。イングランド、ウェールズや北アイルランドで造られたウイスキーをスコッチウイスキーと呼ぶことはできません。スコットランドにおいて3年以上樽熟成させないと、スコッチウイスキーと呼んではいけないと法律で定められています。


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シングルモルトウイスキーを造る蒸留所の風景

スコッチウイスキーとして、どんな銘柄を思い出すでしょう。ジョニ赤・ジョニ黒、シーバスリーガル、オールドパー、カティーサーク、ホワイトホース、ベルなどの銘柄を思い出すことでしょう。これらのブランドは、「ブレンドウイスキー」に分類されます。

スコッチウイスキーの分類としては、ブレンドウイスキーのほかに、「シングルモルトウイスキー」と呼ばれるものがあります。また、製造方法の違う「グレーンウイスキー」もあります。ブレンドウイスキーは、数種のグレーンウイスキーに数十種類のシングルモルトウイスキーを混ぜ合わせて造られています。


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巨大な工場で造られるグレーンウイスキー

シングルモルトウイスキーとは、単一の蒸留所で大麦だけを原料として造られたウイスキーのことです。スコットランドには、現在80カ所以上の蒸留所があります。またグレーンウイスキーとは、連続式蒸留機を用いて、穀物を原料として造られるウイスキーのことですが、一般にはあまり知られていません。

ブレンドウイスキーは、比較的安価で造れるグレーンウイスキーをベースに、香りや味の個性の強いシングルモルトウイスキーを混ぜ合わせて造っています。誰でも飲みやすく、しかも比較的安価で且つ大量に安定した製品を供給することができます。

グレーンウイスキーは、比較的安価な穀物、即ち小麦、トウモロコシ、カラス麦なども原料に使用します。そして、高さ数十メートルある巨大な連続式蒸留機を使用して造ります。24時間連続して造ることが可能で、アルコール度数も90度近くまで高いものを造ることもでき、とても効率の良い仕組みです。ところが、アルコール以外の成分比率が少なくなり、その分個性の少ない製品に仕上がります。


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麦芽を乾燥させる炉(キルン)

これに対して、シングルモルトウイスキーは、比較的高価な大麦を発芽させた麦芽(モルト)を使用し、高さ数メートルのポットスチルと呼ばれる銅製の大きなやかんのような蒸留器を使用して造ります。通常2回蒸留して、70度近いアルコールを抽出します。アルコール以外の成分も残されており、ポットスチルの大きさや形状により、蒸留所ごとに香りや味に個性が出ます。蒸留所によっては、麦芽を乾燥させるために使用する温風に、ピートと呼ばれる泥炭を使用するところがあり、燻製香・ピート香が付くことがあります。

蒸留した後はオーク材の樽に入れて貯蔵庫で熟成させますが、そのとき使用する樽の種類により香りも味も変わってきます。アメリカのウイスキーとして知られるバーボンで使用した樽を使うと、色は付きにくいのですが、バニラ香など甘く花の香りを連想させる製品ができあがります。スペインのシェリー酒で使用した樽を使うと濃い色が付き、シェリー樽特有の香り、ときには硫黄臭が付くこともあります。貯蔵庫が海岸沿いにあると、海の香りが付くとも言われています。

このように、シングルモルトウイスキーは、それぞれの蒸留所によって、ピートを使用するかしないか、ポットスチルの大きさや形状、どのような樽を使用するか、貯蔵庫の場所はどこかなどの要素の違いから、個性の強いウイスキーを造っています。


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2回蒸留するポットスチル

シングルモルトの愛好家は、個性の違う蒸留所ごとに飲み比べて楽しんでいます。ピーティー香が強くヨードチンキを連想させるものや、シェリー樽香が強くゴムを連想させるものもあれば、フローラル、ハニー、チョコレートやトロピカルフルーツを連想させるものもあります。

これら香りも味も異なるウイスキーを混ぜ合わせる比率を考えるのは、ブレンダーの仕事です。ブレンダーが個性の異なる数千樽のウイスキーを混ぜ合わせることにより、ブレンドウイスキーが生まれるのです。


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異なる種類の樽が眠る貯蔵庫

文&写真 : 渋谷 寛(弁護士・司法書士、「スコッチ文化研究所」代表世話人)

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