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RHS チェルシー・フラワー・ショー最新レポート


風薫る5月。爽やかな日差しのなか、英国の園芸シーズンの本格的な幕開けを告げるチェルシー・フラワー・ショーがロンドンで開催されました。その様子をいち早くお伝えします。

フォーマルに着飾った人が多いのもチェルシー・フラワー・ショーの特徴
英国紳士も花がお好き?スマホで写真付きのメモをとる人も多い

RHS(英国王立園芸協会)主催のチェルシー・フラワー・ショーとは開催100年を越える歴史を有し、イギリス国内のみならず世界中の園芸ファンを魅了するフラワー・ショーです。毎年5月20日前後の火曜日から土曜日までの5日間開催され、うち前半2日間はRHSの会員限定、そして後半3日間は一般公開となっています。今年は5月21日から25日まで開催されました。朝8時から夜8時まで(土曜日のみ8:00-17:30)、12時間滞在しても飽きないくらい内容が充実しています。
会場は英国退役軍人の病院施設(Royal Hospital Chelsea)の敷地を使って行われ、期間中は166800人の観客が訪れる計算となっています。限られた会場スペースと安全で快適に楽しむことができる来場者数のバランスを考慮して、RHSはチケット販売をこの人数に設定したと思われますが、もちろん会場に足を運びたいと願っている人はもっと多いので、チケットはすぐに売り切れてしまいます。

テレビでも連日報道され、ショーの様子は英国中の関心事となっている
英国北東部のヨークシャー州の風景をそのまま再現したかのような庭。
はりぼてではなく本物の石を積み、水を流す。そのスケールと手間に驚かされる


会場内には、ショー・ガーデン(ガーデニングコンテスト)、新品種を含めた草花や野菜などの展示、物販、レストランやカフェなど、さまざまなエリアがあります。

アンティークのガーデニング道具を扱うショップブース

なんといっても目玉はショー・ガーデン。ガーデンデザイナーたちが最新の園芸トレンドを取り入れたガーデンで腕を競います。すでに有名になったデザイナーも参加していますが、ここから羽ばたいていく若手デザイナーもいます。
審査員たちによって①Gold、②Silver-Gilt、③Silver、④Bronzeの賞が与えられます。オリンピックであれば金・銀・銅ですが、面白いのは金と銀の間にSilver-Giltがあること。これは「金メッキ」というような意味合いですが、金には足りないが銀にするのも惜しいというような場合に与えられる賞です。今年は参加した11のショー・ガーデンのうちGold 4庭、Silver-Gilt4庭、Silver2庭、Bronze1庭という結果でした。このショー・ガーデンから最新の園芸トレンドが発信され、会場に足を運ぶ人も熱心にメモをとりながら、それを受け止めています。

大御所デザイナーのショー・ガーデンはもちろんGold受賞。
庭の大きさは約11×22メートルもあり、とても一枚の写真に収まらない

いくつかある最近のトレンドを少しご紹介すると、まず在来植物への回帰があげられます。これまでは珍しい外来種に目が向きがちでしたが、環境問題への意識の高まりから在来種の価値の見直しがなされるようになりました。
英国固有種の自生植物を用いた wildflower meadow(野草の草原)など自然風の植栽がもてはやされ、さらに宿根草とグラス類(イネ科植物)が効果的に使われるようになりました。野草があればそこに虫や鳥などがやってきますが、自分の庭に小さいながらもひとつの自然体系が生まれることはとても贅沢なことであると認識されるようになったのです。
このような流れから庭は無機質なものからより自然に近いものが好まれるようになったのは最近の大きなトレンドといえます。害虫がいればそれを捕食する益虫もいるわけで、大切なのは庭の中でそれらのバランスがとれていること。積極的に虫たちにやってきてもらえるように虫のホテル(insect hotel)を庭に設置するようになったのも最近のことです。他にも維持管理の手間の少ない庭なども大きなテーマとして扱われています。

枝と枝の間に揺れているのが虫のホテル
竹を束ねたりして虫たちが営巣できるようにしてあり、素材やサイズなどさまざまなタイプがある
Bee Friendly Seeds(ミツバチたちが好む花のタネセット)
インセクトホテル同様、庭にミツバチを呼び込む発想が広く受け入れられている

RHS主催のフラワー・ショーはチェルシー以外にも幾つかありますが、チェルシーはその歴史と格式で他のフラワー・ショーとは一線を画しています。一般公開に先駆けた月曜日の夕方には女王をはじめ王室メンバーも来賓として訪れショーに華を添えます。今年はキャサリン妃がショー・ガーデンのデザインに携わったことで話題になりました。

キャサリン妃がデザインに携わった Back to Nature Garden。
これもスケールが大きく、全体を写真で伝えるのが難しいが、枝を組み合わせて見えるのは大きなツリーハウス。
子供たちが遊べるようになっており実際にキャサリン妃が3人の子供を遊ばせた姿が新聞を飾った。
海洋プラスチック問題を扱ったブース。
環境問題などにも敏感に反応するのがチェルシー・フラワー・ショーの特徴でもある

チェルシー・フラワー・ショーの魅力をすべてお伝えするのはなかなか難しいのですが、今回はこのくらいにして、続きは7月3日にRIK Park Tokyoで開催されるイベント『ガーデン&エクステリアの未来図〜キューガーデンに学ぶ英国流園芸の魅力〜』でお話します!

取材:舘林正也

チェルシー・フラワー・ショーのレポートの続きやキューガーデンの全容など、英国の最新園芸事情が聞けるイベント『ガーデン&エクステリアの未来図〜キューガーデンに学ぶ英国流園芸の魅力〜』の詳細はこちらから

【プロフィール】
舘林正也 Masaya Tatebayashi
幼少時代は東京、エジプト、インドで過ごす。大学卒業後、都市銀行に10年勤務した後、園芸の世界を志し、渡英。イングランド北東部ヨーク郊外の園芸学校にて園芸の基礎を学び、ケンブリッジ大学植物園、英王立植物園(キューガーデン)にて経験を積む。キューディプロマ修了。英国滞在中は、奨学金制度を利用して米国にて園芸療法を学び、キューガーデンの交換留学制度によりイスラエルのエルサレム植物園でも研修し、またヨーロッパ中の庭園、植物などの見聞を広げた。帰国後は樹木医、庭師、ガーデンデザイナー、園芸講師や執筆活動を通じて園芸の愉しさとその裾野を広げるべく活動中。

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